歴史と文化をつなぐ道「八十里越街道」のロゴマークとキャッチコピーが誕生!

2024.01.04

令和5年10月、三条市・只見町・南会津町にまたがる「八十里越街道」エリアを一体的にプロモーションするツールとして、八十里越街道ブランドのロゴマークとキャッチコピーが誕生しました。

ロゴマークは条件を満たせば自由に活用することができ、現在随時その使用届出を受け付けています。すでに活用も始まっており、のぼり旗、米袋など観光プロジェクトから個人の名刺にまで広がっています。

このロゴマークとキャッチコピーは一般公募によって決定したもので、三条市にオフィスのある「エムズグラフィック」制作のものが選定されています。本記事ではこの公募の趣旨や、選定作を制作したデザイナーの考えから、今後の活用に向けて込められた想いを掘り下げます。

――ロゴマークとキャッチコピーの公募と選定は、八十里越街道の観光プロモーションを推進する越後南会津八十里越プロモーション事務局で進められました。まずは公募した趣旨や発表に至る経緯について、同事務局で三条市経済部営業戦略室営業戦略係長の会田貴生さんにお聞きします。まず、ロゴマークを作ることになった理由から教えてください。


会田:「八十里越街道」は、観光事業の名称としてはまだ新しいもので、まずは地域の全ての方にせめて名前だけでも知っておいていただきたいのですが、その名前が持つイメージもお伝えしたい思いがありました。観光地にお客様をお招きする観光プロモーションを進めるには、その前提として地域が一体となってお客様を迎えようという雰囲気が必要になりますが、そういった機運を高めるには、「八十里越街道」の名前だけでなくビジュアルで訴えるのが分かりやすくて良いだろうと思われました。こうした考えのもと、八十里越街道の観光事業を推し進める「越後・南会津街道観光・地域づくり円卓会議」にて、このエリアのロゴマークとキャッチコピーを作ろうということになりました。また、せっかく作るのであれば、地域の多くの皆様を巻き込むような形が良いだろうと考え、公募になりました。

<公募作のなかから最終的に選定された作品>

――応募はどれくらいありましたか。

会田:令和5年の4月7日から、それぞれの自治体の広報誌やSNSで呼びかける募集を開始し、5月19日に締め切って選考会を行いました。この間に応募いただいた作品としては、ロゴマークが30点、キャッチコピーが72点、合計102点にのぼります。予想以上の反響で、地域の中でも「八十里越街道」に関心を持っていただいている方が多くいらっしゃるのが分かって嬉しかったですね。また、きっと今回の募集をきっかけに「八十里越街道」を知っていただけた方も多かったのではないかと想像します。

――選ばれた作品について選考会での評価はいかがでしたか。

会田:多くの応募があったので選考は大変でしたが、最終的に選定されたのはロゴマークとキャッチコピーは、いずれも「歴史」と「道」を感じさせるものとして評価が高かったです。そもそも「八十里越」という名称自体が歴史的なものですし、ここでは古くから街道として人の行き来があったので、このふたつは本地域らしさを表すものだと思います。キャッチコピーにある「歴史」と「つなぐ」というキーワードはこのことをうまく表現していますし、ロゴマークでは八十里越街道によって結ばれる三つの地域が街道でつながっている様子が歴史的なイメージで描かれていて、シンプルながら非常によく表現されたデザインだと思います。深山の奥という秘境感があり、山間の険しさがあって、また道として外とつながってうまれた里山文化があるという雰囲気もあって、感心しました。北から順に、「三条」「只見」「南会津」と、実際の地図上の位置関係通りに地名が並んでいるのも高評価でした。

――ロゴの活用への期待をお願いします。

会田:このロゴマークとキャッチコピーを通じて、「八十里越街道」エリアの魅力を改めて多くの方々に認識していただけると思います。まずは地域内の皆様に知っていただき、地域一体としての観光ブランドづくりを推進できるよう、ぜひ多くの皆様にご協力をお願いしたいと思います。商品のパッケージにシールとして貼っていただくのもいいでしょうし、ポスターやイベントでご利用いただくなど、観光事業者の方でも個人の方でも、お気軽にご活用ください。使用の手引は以下にあります。

会田:いま「八十里越街道」が、かつて足で歩いていた道から、車で越える街道へと、時代に合った姿で復活を遂げようとしています。人類の叡智を結集した最新の土木技術を駆使して、徒歩の時代には思いもよらなかった道路になるわけですが、山間を行くことは同じですし、景観自体はそう変わっていないはずです。まさに「歴史と文化をつなぐ道」であることを、このロゴマークとキャッチコピーから発信していきたいと思います。

――では次に、ロゴマークとキャッチコピーの両方で採用となった三条市の「(有)エムズグラフィック」の樋口由賀利さんと富永亜矢子さんにお聞きします。まず、応募のきっかけやお気持ちについてお願いします。

樋口:私たちの会社は様々なデザインを手掛けておりますが、実はコンペ(公募した複数の案から優秀なものを絞り込む形式)には参加しない方針でやってきました。コンペというのは、どうしてもスポット的、その場限りになりがちです。時間をかけてお客さまに寄り添いながら、その意向を深く汲んだ上で総合的にデザインしていくという私たちの方針には馴染まないのです。

――それなのに例外的に応募に至ったのには理由があるんですね。

樋口:そうですね。嵐渓荘の大竹さん、三条市営業戦略室の林さんなど、お付き合いのある方々から「八十里越街道」への熱意をお聞きし、同じく地元で事業を営む者として、その思いを共有する意味でも今回のコンペは特別と考え、一緒にがんばって盛り上げていこうと応募を決めました。

富永亜矢子(左)さんがデザインを、樋口由賀利さん(右)がキャッチコピーを担当した。

樋口:もう一つ、今は「三条ものづくり学校」に入居している私たちの会社ですが、創業からこちらに越してくるまでの20年近く、八十里越街道の入り口であり出口でもある下田で営んでおりました。それも応募した動機になっています。

応募を決める前に只見町と南会津町を旅したのですが、奥深い山々がありながら三つの地域が結ばれていることを肌で感じ、何百年も前からたくさんの人々が往来し、河井継之助も歩いた道へのイメージが浮かんで、深い感銘を覚えました。自然環境の素晴らしさにも改めて感動しました。

――キャッチコピーは樋口さん、ロゴのデザインは富永さんですね。

富永:私はビジュアルを担当しましたが、資料など拝見し、道に関するものだったので、単純にロゴの中に風景を描きたいと思いました。ラフを描いて社内であれこれ議論しながら固めていきました。「歴史と文化をつなぐ道」というキャッチコピーを樋口からもらったとき、方向性は合っているなと確信しました。「つなぐ」という言葉をキーワードに、道路完成への人々の「想い」の強さとか、諦めない芯の強さを繊細ながらもしっかりした線で表現できたと思います。

――3つの自治体名をハンコにしているのが斬新に感じますが…

富永:これは、書家でもある樋口の作品に使われている落款からインスピレーションを得ています。落款に憧れがあったので、いつかデザインに取り入れたいなと思っていました。

――採用される自信はありましたか。

富永:いいえ。私たちのコンセプトや提案には自信がありましたが、どんなものが選ばれるのかは分からないからです。普段の仕事ですと、お客さまと直に打ち合わせしながら時間をかけて詰めていくのですが、公募の場合はそれができませんから、内部で検討を重ねるしかありませんでした。

――ロゴ活用と八十里越街道への期待をお聞かせください。

富永:このロゴでのぼり旗を作って街道沿いにはためかせたいという連絡をいただきました。その景色を想像するとワクワクしてしまいます。事業用でなくても「個人だけど、名刺に入れて広めるよ」とおっしゃってくれる方もあり、本当に嬉しいことです。どんどんご活用いただければと思います。

樋口:ロゴは左上に三条があり、只見川に沿って三つの自治体が並んでいるのを「流れ」として表しています。険しい山があり丘陵があり里山の風景があり、只見川には個性的な橋梁がいくつもあり、特に只見線の駅に霧の立ち込める様子など、幻想的で言葉にできない美しさです。ここを歩いた昔の人のロマンも胸に迫ってきます。

樋口:それにこの地域の素晴らしさは、自然環境だけでなくて文化も継承されていることです。例えば南会津の「檜枝岐歌舞伎(ひのえまたかぶき)」もその一つで、伝承が難しい農村歌舞伎が今の時代にまでつながってきたというのは感動でしかありません。

新しい八十里越道路によって所要時間が今の半分で行き来できるのですから、交流が濃くなり、文化が溶け合って賑やかになると期待しています。地域間で互いの良さを知り合い、この宝の山を外に向けても発信できたら面白くなると思います。

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越後南会津街道プロモーション事務局
▼ロゴマーク・キャッチコピーについてのお問い合わせは下記までお願いします

三条市 経済部営業戦略室営業戦略係
新潟県三条市旭町2-3-1
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MAIL  eigyo@city.sanjo.niigata.jp

只見町 交流推進課観光係
福島県南会津郡只見町大字只見字町下2591番地30
TEL  0241-82-5220
MAIL ijyuu@town.tadami.lg.jp

南会津町 商工観光課観光交流係
福島県南会津郡 南会津町田島字後原甲3531番地1
TEL 0241-62-6200
MAIL h_shokou@minamiaizu.org


取材日/2023年12月7日
取材・執筆/北原広子
写真提供/三条市経済部営業戦略室・(有)エムズグラフィック