一人と二羽からはじまった冬の物語「白鳥の郷公苑」。

2022.02.10

全国的にも珍しい、川で越冬する白鳥たち。

白鳥の観察スポットといえば、瓢湖(阿賀野市水原地区)や福島潟(新潟市北区)などの湖や潟を思い浮かべますが、ここ三条市下田地区は “川”に白鳥が飛来する全国的にも珍しい場所です。三条市と加茂市にまたがる粟ケ岳、ここから流れる五十嵐川の上流に位置する「白鳥の郷公苑(はくちょうのさとこうえん)」は、間近に白鳥を見られるスポットとして、白鳥が見られるのは例年11月中旬ころ~3月中旬ころ年間約2万人が足を運んでいます。

多い年には約600羽の白鳥、マガモ、コガモ、キンクロハジロ、ヒシクイなどが川を埋め尽くすほどに群をなして、目の前で優雅に泳ぎながら餌を啄み、そして大空へと飛び立つ姿は大迫力のひと言です。

白鳥の郷公苑の様子

澄んだ川の水が育む、雪にも負けない美しさ。

白鳥は水のある場所で餌を食べることを好むので、泥で身体が汚れることもしばしば。しかし、五十嵐川に飛来する白鳥が降りしきる雪にも劣らないほどの純白さを放っているのは、五十嵐川の澄んだ水のおかげだといいます。

そして、川に飛来する白鳥ならではの姿といえば、泳いでいる様子もそのひとつ。湖や潟にいる白鳥とは少し違い、川の流れも手伝って浮いているかのようにスーッと近づいてくる姿を見ることができたり、泳いでいる足元まで見ることができたりと、例年11月中旬ころ~3月中旬ころの飛来次期になるとさまざまな姿を見せてくれます。

雪に同化する白鳥

優雅に泳ぐ白鳥たち

地元の人たちがつないだ白鳥リレー。

「1986年、すぐそこに住んでいた小島文吉さんが、2羽の白鳥に餌を与えたことからはじまったんですよ」と、「白鳥の郷公苑」の組合長を務める斎藤さん。

「白鳥の郷公苑」組合長 齋藤さん

2羽の白鳥に餌を与えたことからはじまった下田地区と白鳥の物語は、2013年に「白鳥の郷公苑」がオープンするまでの27年間、小島さんを含め3人の地元の人たちによって守られてきました。「最初は2羽から、それが4羽、10羽と増えていって。小島さんが亡くなった後は、近所の方が…そしてまた近所の方が…私で4代目になりますかね。そして5代目は間違いなく、地元の人たちです」。

斎藤組合長が5代目と呼ぶのは、地域の老人会や町内の有志の人たちです。毎日、朝夕の決まった時間に緑色の法被姿で餌の入ったバケツを持ち、川へと歩みを進めると、一斉に群れをなして集まってくる白鳥たち。当番制での餌やりが地域の人の日々の生活での張り合いとなり、毎年帰ってくる孫のような存在になっているそうです。

生まれたばかりの幼い白鳥は、春にかけてグレー色から斑へと変化します。そして翌年、また同じ地に、真っ白な輝きを放ちながら舞い戻ってくる姿は、まさに里帰りそのものです。もしかすると、育ててくれた地元の人たちに、成長した有志を披露してくれているのかもしれません。

当たり前の風景をこれから先も。

五十嵐川と白鳥の物語は、今年で36年を迎えます。生まれたときから身近に白鳥がいた子どもたちは、今は親となり、またその子どもたちへと繋がっています。2018年公開の映画「ミッドナイトバス」のロケ地にもなり、一躍有名な地となった今でも、自然を守り、白鳥とともに生きる下田地区。五十嵐川と白鳥、そして地域の人たちの物語は、これからもずっと続いていきます。

「白鳥の郷公苑」で撮影された写真からなる白鳥のモザイクアート作品

白鳥の郷公苑

住所:三条市森町1774番地1
電話番号:080-8834-5467
営業時間:観察舎午前9時~午後4時(11月中旬~3月中旬)/
観察デッキ:終日開放
料金:無料
飛来次期:例年11月中旬ころ~3月中旬ころ
アクセス:北陸自動車道 三条燕ICから車で約40分
「道の駅漢学の里しただ」から車で約5分

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