奇跡の復活を遂げた只見線と只見町をめぐる旅 前編

2022.10.21

新潟県三条市から福島県只見町・南会津町にかけて伸びる「八十里越街道」エリアには、知る人ぞ知る秘境鉄道が通っています。

その名は「只見線」。自然溢れる山々や川などの絶景が楽しめる車窓や、里山の自然や暮らしを縫うように進む路線の魅力が、全国に熱心なファンを抱えています。

今回はこの「只見線」の魅力を、全国を飛びまわって鉄道旅行をレポートしてきた私マサテツが、実際に旅をしながらお届けいたします!

  • 1日3本の超ローカル線

2011年7月に発生した新潟・福島豪雨。只見町では4日間で約700mmの猛烈な雨が襲い、只見線は壊滅的な被害を受けました。中でも会津川口〜只見間は橋梁が流出するなどし、長きに渡り運休となってしまいました。そんな只見線が実に11年ぶりに全線再開!

今回は只見線を全線乗り通す2日間の旅を計画。1日目は小出から会津若松まで全線を乗り通し、2日目は会津若松から只見で途中下車。只見町を楽しんだのち、再び只見線に乗車します。

430D 小出13:12→会津若松17:24

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まずは新潟県の小出駅から旅はスタート。小出駅から発車する只見線は1日5本。そのうち途中の大白川までの列車が2本。つまり只見方面まで走る列車は1日にたったの3本。"超"がつくほどのローカル線なのです。

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国鉄カラーのキハE120形

止まっていたのは車両は朱色とクリーム色のツートンカラー。これは只見線全線再開を記念して、かつて只見線を走った国鉄時代の気動車をオマージュしたカラー。1編成しかなく、初日から出会えたのは幸運。素敵な旅になりそうです。

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2両編成の車内ですが、平日にもかかわらず座席はほとんど埋まっていました。全線再開したばかりなので、多くの人の注目を集めているようです。

13時12分。列車は小出駅を発車。まずは田園風景の中を走ります。ほとんどの田んぼは刈り取られたあとですが、一部はまだ黄金色に輝く稲穂の姿が見られました。

列車は全長6359mの六十里越トンネルを走り、新潟県から福島県へと入ります。左手に只見スキー場が見えてくると、まもなく只見駅です。
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14時25分。列車は只見駅に到着。この先は11年ぶりに運転を再開した区間へと入っていきます。
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会津塩沢〜会津蒲生間

窓の向こうに只見川が見えてきました。この先只見線は、この只見川に沿って走ります。残念ながら外は生憎の雨で、景色はよくありませんでした。只見川の絶景は明日に期待したいと思います。

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15時25分。列車は会津川口駅に到着。

線路のすぐ隣を只見川が流れています。会津川口駅ではどの列車も停車時間があるので、只見川と列車を合わせて撮影してみては。

会津柳津駅を出ると只見川とお別れし、会津盆地へと入って行きます。
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17時24分。列車は終点の会津若松駅に到着。小出駅から4時間12分の旅でした。

今夜は会津若松で宿を取り、明日は再び只見へ行きます。出発が早いので早めに就寝することにしました。

  • 只見川を望む絶景車窓

423D 会津若松6:08→只見9:07

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翌朝の会津若松駅から乗車するのは6時8分発の小出行き。これを逃すと次の小出行きは13時5分までありません。

この日は3連休の初日。1両編成の列車ですが、車内は早朝から多くの人でいっぱいです。

列車は会津盆地から山間部へ。しばらくすると最初の絶景ポイント、第一只見川橋梁を通過します。
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第一只見川橋梁 会津桧原〜会津西方間

曇り空で少し靄がかかっていますが、雨は降っておらず穏やかな流れ。

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第二只見川橋梁 会津西方〜会津宮下間

会津西方駅を出てすぐに渡るのが、第二只見川橋梁。こちらも只見川がきれいに望めます。列車は橋梁の上をゆっくりと通過するので、じっくり絶景を楽しむことができます。
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列車は会津宮下駅に停車。ここでは反対列車と行き違います。
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第三只見川橋梁 会津宮下〜早戸間

会津宮下駅を出ると車窓右手に宮下ダム、そしてしばらくすると第三只見川橋梁へ。只見川を渡る橋梁はすべてが絶景スポット。私は絶景を見逃すまいと、スマートフォンの地図アプリをチェックしながら車窓を楽しみました。

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早戸〜水沼間

早戸〜水沼間では只見川のすぐそばを走ります。この頃から雲の隙間から青空が。山々がまるで鏡のように川に映り、幻想的な光景を見ることができました。

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列車は会津川口駅に到着。ここで再び反対列車と行き違い。ちなみに反対列車の会津若松行きは、会津川口駅でなんと39分も停車しています。こののんびりした感じもローカル線らしくていいですね。

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第七只見川橋梁 会津横田〜会津大塩間

列車は、長らく不通となっていた区間へ。見えてきた橋梁は第七只見川橋梁。新潟・福島豪雨で流出してしまいましたが、再開に合わせて架け替えられました。

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第八只見川橋梁 会津塩沢〜会津蒲生間 提供:福島県只見町役場

列車から見る只見川の車窓も絶景ですが、只見線は列車を撮って楽しむ人にとっても絶好の撮影スポット。全国から多くの鉄道ファンが訪れます。
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会津蒲生〜会津塩沢間

ここから只見川を望む車窓が見られるのは実に11年ぶり。こんな素晴らしい景色を列車から再び見ることができて、心の底からよかったと思いました。

只見線を訪れる際には、只見線の絶景ポイントの紹介、只見線の歴史、イベント列車の運行情報など只見線に関する情報が満載の「只見線ポータルサイト」のホームページを参考にするといいと思います。

只見線ポータルサイト
URL:https://tadami-line.jp/

後編では只見線のルーツである田子倉ダムなど、只見町の観光地を巡りたいと思います。

  • 只見線DATA

「JR東日本 只見線」
起点:会津若松駅 終点:小出駅
駅数:36駅
路線距離:135.2km
便数:会津若松〜小出間全線直通列車が1日3往復 その他区間列車あり
開業:1926年10月15日
全通:1971年8月29日
所要時間:会津若松〜小出間 約4時間40分 2640円 会津若松〜只見間 約3時間20分 1690円 只見〜小出間 約1時間10分 990円

この記事を書いた人
マサテツ
1986年生まれ。兵庫県出身。とある鉄道会社で14年間鉄道マンとして勤めていた。食べることと鉄道に乗ることが大好き。楽しくて美味しい列車の旅を求めて全国の鉄道を巡っている。旅の模様は、ブログ「マサテツ〜食べ鉄旅日記〜」で綴っている。
マサテツ〜食べ鉄旅日記〜:https://www.masatetsudo.com/